用語解説

名前は“親水化処理”となっていますが、水だけではなく液状の物(油やインク等)を表面にぬれやすくする処理であります。オフセット印刷の際に、版胴へ水を付けるロールや、インクを塗るロールなど様々な用途に用いられます。ほかの例ではガソリンエンジンのピストンリングに被覆してあるクロムめっきへ親水化処理(親油化処理)を行い、ピストンリング表面に油をぬれやすくしてエンジンのシリンダー部やリングの摩耗を低減させる目的で使用されます。液体の転写目的で使用される場合、使用箇所は摩耗が起きやすい環境が多いため親水処理ではクロムめっきが多く用いられている。
クロムめっきの親水化処理として用いられている方法はおおよそ2通りあり、①クロムめっきに元からあるクラックをアルカリ溶液中で陽極処理する方法と添加剤を加えた酸(塩酸など)に浸漬して化学的に溶解させてして広げる方法と、②素材部分あるいはクロムめっき面へブラスト処理などで凹凸をつける方法があります。①の方法は表面仕上げが準鏡面程度まで上げることができるので、面粗さが小さいことを要求される個所に用いられますが、クラックを広げる為クラックを通じての腐食の恐れがあります。また②の方法はめっき面を凸凹(粗さの数値としてRyで3~10程度、Rzで2~7程度)にして濡れ性を上げる為、鏡面にはならず白く曇った状態となります。最近では別の方法として、めっき条件を変えることで特殊な表面状態を作り出す方法も(弊社では“特殊マット処理”と呼んでいます)出てきています。これらの処理でいずれも目標とするクラックの拡大度合いや表面粗さは、ぬれさせたい物質の粘性などによって変わるので、粗さ等の条件を振ったテストピースで事前に濡れ性評価試験を行い、どのような状態が最もよく塗れるかを調査しておく方がいいです。