クロムめっきは大きい引張応力を持つためクラックが生じやすい。めっき厚みが0.5μm以下の場合はクラックが生じづらいため、装飾用途では厚み0.1~0.5μmのクロムめっきが行われている。単位面積あたりのクラック数はめっき浴温やめっき電流密度等といったパラメータで変化し、一般にめっき浴温が上昇するとクラック数が減少する。
防食の用途で採用される手法として半光沢ニッケルめっきか光沢ニッケルめっきを被覆した上にクロムめっきをする方法がある。また特に高い耐食性が必要な部品には、①クロムめっきのクラックを微細なもの(マイクロクラック)にする、②無数の微細孔が開いた表面(マイクロポーラス)にする、といった方法が採られる場合がある。こういったクロムめっきが高い耐食性を得る理由としては、表面のマイクロクラックやマイクロポーラスが下地となるニッケルめっきの露出面積を増大させることで、腐食電流を分散させるためであると考えられている。
マイクロポーラスを有するクロムめっきは、下地となるニッケルめっき浴中に粒径0.02μm程度のシリカ、アルミナ、カオリン、硫酸バリウムといった微粒子を懸濁させるジュールニッケルめっきと呼ばれる複合ニッケルめっきを行い、その上にクロムめっきを行うことで得られる。懸濁させる粒子は非常に微細であるため、めっき表面の光沢度には影響しない。自動車部品等といった高い耐食性を要する部品には、このめっき法が採用されている。
工業用途の厚づけクロムめっきにおいては、HEEF浴はマイクロクラックを得ることができ、優れた耐食性を示すとされている。過去に、クラックを無くすことで耐食性の向上を目指したクラックフリークロムめっきも検討されたが、CASS試験のような静的状況では耐食性が優れていたものの、製品として使用される実環境下では逆に大きなクラックが生じ、耐食性が悪くなるという結果が得られている。

参考文献 1)榎本英彦:めっきのトラブルシューティング、日刊工業新聞社(2011)
2)電気鍍金研究会編:めっき教本、日刊工業新聞社(1986)
3)森川 務:大阪府鍍金工業組合、高等めっき講座テキスト
4)榎本英彦:実践めっき技術講座、工業用クロムめっき(1992)