クロムめっきを製膜する際、同時に大量に発生する水素ガスは微量ながらクロムめっきの被膜中に取り込まれる。この取り込まれた水素は吸蔵水素と呼ばれている。吸蔵水素がめっき皮膜の物理的・化学的に作用すること、クロムめっきの硬さが向上していると言われている。一方で、吸蔵水素の一部が母材(鉄など)に拡散することで、めっきされた品物の脆化を生じさせる要因にもなる(この現象を水素脆化と呼ぶ)。

<水素が吸蔵される状態>
多くの報告から、クロムめっき中の吸蔵水素は下記状態で保持されていると考えられている。

(1)クロムの格子に固溶している状態、(2)気体として単に機械的に組織の間隙に含まれている状態
(3)ある割合でクロムの水素化物を生じている状態、(4)表面に吸着されている状態 など

また水素脆化を防止するために、吸蔵水素を放出する手段はいくつかある。

<常温における水素の放出>
被めっき物中の吸蔵水素は時間経過に伴い徐々に放出される。しかし、140-150日間放置してもなお60%前後の水素が残存すると報告されている。

<熱処理による水素の放出>
被めっき物に別途熱処理(ベーキング)を行うことで、吸蔵水素を積極的に放出させることができる。熱処理によって吸蔵水素がどのように放出されるかは、加熱温度および被めっき物の大きさに関係するので一律には決められない。熱処理条件の一例ではあるが、熱処理温度を200℃で30分間熱処理することによって、吸蔵水素の50%が放出されるという報告がある。以降、時間経過による水素放出は緩やかになる。ちなみに200℃で3時間加熱した場合、吸蔵水素は約10%まで低減させることができる(製品によってはその限りではない)。

現在使用しているめっき製品で水素脆化が起因となる問題が発生している場合、めっき後の熱処理条件を調整することで改善する可能性がある。にあたる場合がある。

参考文献
岸 松平, クロムめっき, 日刊工業新聞社, 1964, p.208-211