めっきの効果を十分に発揮させるためには母材の選択が重要である。母材の選択は、用途と電着性(クロムめっきの難易度等)の両面から検討するべきでいずれかが一方的であってはならない。
下地の材質に関係するクロムめっきの難易度は次のようになっている。
(1)クロムめっきの容易な材質
炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ニッケル-クロム鋼、ニッケル、銅および銅合金、亜鉛合金などがある。
(2)特殊な前処理が必要な材質
鋳鉄、タングステン鋼、マンガン鋼、肌焼鋼、窒化鋼、アルミニウム合金などがある。
(3)クロムめっきが不適当な材質
タングステンあるいはマンガンを大量に含有する鋼類、黒鉛化鋳鉄などがある。

<工業用クロムめっきの硬さを生かす下地について>
下地母材の硬さは使用目的によって決定されている。いかに硬質クロムめっきが硬いといえ、使用状態に耐え得るものでなければ、その効果が十分に発揮されることがない。一般に単純なすべり応力を受けるような部品は低炭素鋼でも問題ないことが多い。しかし、圧縮または衝撃を受ける場合は、母材の硬さがクロムめっきの耐久性に重要な要素となっている。
例えば金型や圧延ローラなどはめっき厚みを増すより、母材の硬さを上げる方が効果的である。またクロムめっきにより水素脆性を生じさせることは良く知られているが、一般に硬い母材ほどこれが著しくなっている。理由は素材の応力や硬さが増加すると水素の感受性が敏感になるからである。したがって、単純に硬さを増大させることは避けるべきで、硬さが57~62(HRC)くらいまでを上限と推奨している。硬さが40(HRC)以上の硬さを有する部品は、水素脆性を極力防止するために熱処理によるベーキングが施されることが多い。ベーキング処理は180~200℃で3時間程度の加熱が一般的である。