表面処理加工の一連の流れを踏まえることでの品質向上

機械加工部品へ表面処理を行った後、実際の生産現場で使用される中で正常に機能するためには、表面処理自体の加工品質が重要になってきます。ここでは、代表的な表面処理であるめっき加工の事例で紹介します。
表面処理加工の下準備を含めた一連の流れを理解することで、 “表面処理が均一になっていない”、“一部のめっきだけが剥がれた”などのトラブルを防止することにつながります。

面処理加工をする金属表面の一般的な状態

金属にめっき加工を行うためには、めっき液を入れるためのめっき槽や、電気を流すための整流器や陽極が必要になります。しかし、これらの溶液や設備が揃えば、高品質なめっき加工が行えるわけではありません。目的に沿った機能性を付加する被覆の高い密着度を実現するためには、金属の表面の汚れ(金属は通常酸化被膜などに覆われてる)の除去が必要です。一般的に機械加工などの工程を経て表面処理を行う金属の表面には、上層から①汚れ(ゴミ・油脂)の層、②サビの層、③酸化物の層、④加工変質層、⑤加工変質層と素材金属の組織が交じり合った拡散層が形成されています。品質の高いめっき加工を行うためには、金属表面から少なくとも、 ①汚れ(ゴミ・油脂)の層、②サビの層、③酸化物の層、までの汚れの除去は必須であり、場合によっては④加工変質層、⑤加工変質層と素材金属の組織が交じり合った拡散層までを除去することもあります。

表面処理加工を行う金属断面の模式図

機械加工などを行った金属素材の表面には、上記のような様々な汚れやサビ、酸化物が層になっている。

 

金属素材への分析と前準備で決まる表面処理の品質

金属素材に形成された汚れやサビの層を除去する方法は、脱脂 : 金属表面の油などの汚れの除去と酸処理(活性化): 金属表面酸化層、加工変質層の除去が有効です。めっき加工の品質は、めっき液の鮮度やめっき槽、電極の設置方法だけなく、めっき被覆を形成する前段階が表面処理企業の技術力になっています。金属素材はそれぞれに前処理が存在しているため、表面処理を行う前に金属表面の状況を正しく分析することが、大きな品質の差になってくるのです。また、逆に言えば、表面処理をご発注される企業様は、該当金属が単に鉄か、ステンレスか、アルミニウムであるとか材質だけを指示するのではなく、JIS基準で相手に伝えることができれば、トラブルの発生の低減につながります。
めっき加工の場合では、金属素材に被覆した”めっき皮膜”は単純に金属上にのっている訳ではなく、素材の金属と完全に密着することに特徴があります。めっき金属の原子が下地金属の原子と織りなす原子間力、つまり金属結合を呈して完全に一体化している状態になります。めっきの前処理として、汚れの層、サビの層、酸化物の層を完全除去する理由は、素材金属の原子にめっき金属の原子をより接近させる手段となっていると考えれば、如何に金属素材の状態の分析と下準備が重要かが理解しやすいのではないでしょうか。

 

電気めっきの加工可能金属表 (元素の周期表)

ちなみに、表面処理は処理の種類にもよりますが、すべての金属に加工することはできません。電気めっきであれば、下記の75元素の内、35元素が可能となっています。


電気めっきが可能な元素は、75元素のうち赤字の網掛けの30元素。合金の形態を取らせれば+5元素。