めっきによる金属の特性を知る一端として、当社では磨きステンレス板上に、目的とするめっきを、0.1~ 0.2mm析出させたのち、それをステンレス板より剥離し、金型でプレス加工することにより引張試験片(JIS-13B)を作製し、めっきによる金属箔の強度と伸びの特性を、調査することがある。

オートグラフによる引張試験の状況引張試験后のニッケル-5%銀めっき箔

めっき皮膜の摩耗は、製品が特に工業的用途に向けられる場合、製品の寿命を左右するために、最も関心を持たれると同時に重要な問題である。その試験法としていろいろの方法が公表されているが、当社ではテーバー(Taber)式試験法を常用している。(写真-35)

テーバーアブレッションテスター

【注記】:当社では上述したように摩耗試験法としてテーバー法を常用しているが、その結果はあくまで目安とすべき性質のものである。というのもめっきされた製品が使用される条件は千差万別であり摩耗の種類もさまざまなために特定しためっきが摩耗に対してどの程度の耐久性を有するかを明言することは、はなはだ難しい。慣習的には、めっきの硬さでもって摩耗への抵抗と結びつける例が多いが、実際には硬さと耐摩耗性の関係は絶対的のものではなく、硬さに耐摩耗性が比例しない場合もある。

1例としてワット浴から得たニッケルとこれをマトリックスとして粒径lμのアルミナを分散させたニッケル-アルミナ分散めっきの硬さと耐摩耗性の関係をテーバー摩耗試験機で調査した結果を図-9に示した。

ニッケルおよびニッケル-アルミナ分散めっきの硬さと耐摩耗性の関係

このように、めっき皮膜の耐摩耗性はそのめっきの示す硬さとは直接比例しない場合もありうる。また、試験の方法を変えると、結果もまた変化することもあって摩耗現象は極めて推測の難しいところがある。