めっきで得たクロムは、写真-1で見られるように、層間に無数の割れ(クラック)がある。

代表的なクロムめっきの断面組織水酸化ナトリウムによるエッチング

この割れは、目視では、判別し難いが、顕微鏡的に見れば観察できるものである。そして、割れは、いつも同じ状態で形成されるものではなく、めっきする条件、たとえば、液温、電流密度、クロムめっき液の組成を変化させると割れの状態も変化する。 (例:写真-2)クロムめっき層に存在する割れは、極めて重要な意義を持っていて、耐食性から見ると、欠点となり、潤滑性から見ると利点として作用する。

条件を変化させてめっきしたクロムめっきの断面例

すなわち、クロムめっき層の割れは、水分の侵入経路となり潤滑性を付与するために

は、この割れ目を積極的、つまり、クロムめっきの後特殊な操作条件のもとで割れ目

を拡大し、この割れ日に、潤滑油を保持させるのである。表面処理の分野では、クロムめっきの表面に積極的に割れ目を付与したものをポーラスクロムと称し、形成する割れ日の形態によって、ピンポイント型と、チャンネル型に分類される。 写真-3,4は、チャンネル型ポーラスクロムの例を顕微鏡的に表面と断面とで示した。ポーラスクロムめっきの応用例は、内燃機関のシリンダーやピストンリングが代表的である。

チャンネル型ポーラスクロムの表面状況例

チャンネル型ポーラスクロムの断面例