無電解ニッケルと電気ニッケルとの物性差を、簡単に対比させると、その顕著な差異は、硬さの加熱変化の挙動と、それに伴なう摩耗特性の変化にある。たとえば、 図-3は当社仕様によるスルファミン酸浴からのニッケルめっきと対比させた酸性浴次亜リン酸塩無電解ニッケルめっきの物性をあらわしたものである。

スルファミン酸ニッケルめっきと無電解ニッケルめっきの硬さ、耐摩耗性

このように、無電解ニッケルめっきには、電気ニッケルめっきにない特性もあるが、物性面に限ると皮膜の柔軟性がなく(伸びが低い)、融点も低いといった難点もあって、その適用は、使用される状況を十分に踏まえた上でなされるべきである。写真-12は、代表的な無電解ニッケルめっきの顕微鏡的組織である。また、写真-13,14は、無電解ニッケルめっきをロールに適用することを前提として、種々の試験を行なった時の1例で、目的は耐衝撃性を知ることにある。すなわち、ブリネル硬度計による圧コン試験により、荷重を受けためっき面の変化状況を知るために実施したものである。

無電解ニッケルめっき(Ni-P)の顕微鏡的組織

圧コン形成前めっきの組み合わせ_電気ニッケル_無電解ニッケル_クロム

圧コン形成後めっきの組み合わせ_電気ニッケル_無電解ニッケル_クロム