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厚いクロムめっき皮膜の断面を観察すると「クラック単層」の集合体になっております。クロムはめっきを開始すると膜厚の増加と共に徐々に応力が増加していき、ある膜厚で応力がクロムの結合力を上回ってクラックが発生します。そしてまた、クロムめっきはこの繰り返しで厚くなっていきますが、応力がクロムの結合力を上回る厚みのことをクラック単層として呼ばれております。クラック単層のクラックは独立しているものもあれば、上層のクラック単層のクラックと繋がったものもあり、理屈では厚くなるほど繋がる確率は低くなります。なお、クラック単層の厚みは、クロムめっき浴種、めっき条件等で異なりますが、0.6~0.8μm程度と言われております。逆に言いますと、この厚み以下のクロムめっきにはクラックはないことになります。
また、クロムめっきに見られるクラックは、腐食を誘発する原因となりますが、一方でクラックを積極的に利用する場合もあり、その代表がポーラスクロムめっきであります。ポーラスクロムめっきは、内燃機関のシリンダーに適用されて、潤滑油を保持する機能を有しております。また、別の用途例としましては、製紙業界とグラビア印刷業界で親水性クロムめっきローラーとして利用されております。
因みにポーラスクロムめっきを適用する際は、クラック起因の腐食を防ぐ為、下地にニッケルめっきを施しております。