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硬質クロムメッキは大気中では表面が緻密な酸化皮膜に覆われ不働態化しています。そのため、その自然電位は金や白金に匹敵する程度まで貴となっていると言われています。クロムメッキは大気中など一般的な環境下では安定ですが、例えば、塩酸に対しては激しく水素を発生しながら溶解します。これは、塩酸のような非酸化性の酸では表面に生成した酸化皮膜が容易に溶解し急激に耐食性が低下するためです。その他の酸においても徐々に酸化皮膜が侵される傾向にあり、この酸化皮膜の溶解の程度によって耐食性は大きく異なるといえます。なお、アルカリ性溶液に対しては一般に安定しています。
また、クロムメッキ皮膜は内部に立体的な網目構造のマイクロクラックを有しており、このマイクロクラックはメッキ表面側から素材界面まで貫通していると考えられます。そのため、メッキ表面から水分が侵入し素材とクロムメッキの境界まで到達した場合、単純に水分で素材が腐食したり、さらには異種金属界面に水分が存在しているため局部電池を形成し素材側もしくはクロムメッキ側が急速に腐食することもあります。
例えば、鉄上にクロムメッキを10μm程度施工したものを水中に浸漬しておくと表面に茶褐色の鉄錆(酸化鉄)が発生することがあります。これはめメッキ表面からマイクロクラックを通じて水が素材界面まで侵入し、素材に鉄錆が発生(発錆)したためと考えられます。この対策として、メッキ皮膜の厚さを増加させると発錆を大幅に遅らせることが可能であり、さらにはクロムメッキの下地にニッケルメッキを追加することで鉄錆の発生を防止することができます。(ただし、ニッケルメッキを追加してもニッケルメッキとクロムメッキの界面での局部電池による腐食リスクは回避できません。)
耐食性を評価する方法としては塩水噴霧試験やキャス試験などがあります(JIS Z 2371)。