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鉄と銅はイオン化傾向の差が大きく(銅は鉄よりかなり貴な金属)、鉄が溶解するような環境に銅イオンが共存すると、鉄表面に銅が置換反応で析出します。置換析出した皮膜の密着力は非常に低いため密着不良となります。一般的な銅めっき液には硫酸銅、ピロリン酸銅、シアン化銅の3種類ありますが、酸性浴である硫酸銅めっきでは液中で鉄が溶解するため、置換反応が起こり密着不良の銅めっきとなってしまいます。ピロリン酸銅とシアン化銅はアルカリ浴なので鉄は溶解しにくいですが、ピロリン酸銅浴は弱アルカリであり、ピロリン酸の銅に対するキレート力も低いため、置換反応を完全には防止できません。シアン化銅はアルカリ浴で且つシアンの銅に対するキレート力も大なので(強固な錯体を形成し銅が容易には析出しにくい)、置換反応は生じません。したがって、鉄上に直接銅めっき可能なものはシアン化銅浴となります。その他の浴で銅めっきする場合には、鉄上にニッケルめっきしてから銅めっきを行うのが一般的です。